20万打企画 Vol,9









She patted his cheek affectionately.









保健室に向かって歩いてくる彼。

その姿に気づき、慌てて彼女、武之内空は保健室を飛びだそうとした。

「太一?!」

「あれ? 空、何してるんだ?」

驚いて立ち止まる太一に、今日は委員会の当番だったの! と伝える。

「それより、どうしたの? 怪我?」

「あぁ、ちょっと転んじった」

くいっと彼が指さす方を見ると、膝が見事にすりむけて血が出ている。

「消毒、頼む」

「その前に水道で足洗って。準備しておくから」

「おう」

彼女に言われたとおり、肯定にある水道で足の泥を流す。

傷に染みたが、小さなうめき声を上げるだけだった。









「しみるわよ?」

「おう、こい!」

消毒液を湿らせた脱脂綿が太一の傷口に触れる。

瞬間、言葉にできないほどの痛みが全身をつらぬいた。

「つッ!!」

「はい、我慢我慢」

素早く、流れよく空は彼の消毒をすませ、大きめのバンドエードを貼った。









「はい、おしまい」

「おう、サンキュー」

お礼を言い、立ちあがる太一を空は慌てて止めた。

「空?」

「傷発見。太一、頬もすりむいてる」

「・・・マジ?」

「マジ」

空は太一の頬に触れた。再び痛みが走る。









「いてぇ・・・」

「ここも消毒しておかないと」

「悪ぃ、頼む」

再びあの全身を貫くほどの痛みが走るのは嫌だったが、抵抗したところで彼女には勝てない。

空は太一を心配して、そう言ってくれているのだから。

覚悟を決めて「よしこい!」と意気込む太一に、空は苦笑した。

そしてゆっくりと、消毒を再び始める。









「どうする? バンソーコー、一応貼っておく?」

「いや、いいよ。そのままで」

「わかった」

ならお終い。と空は言う。言いながら、薬箱を閉じた。

「おう、サンキューな」

空の手際の良さに心底感謝しながら、太一は何となく彼女を見ていた。

すると、空と視線が交わる。









「空?」

太一の問には答えず、そっと空は太一の頬を優しく撫でた。

「太一、傷つくりすぎ」

少し怒ったようなその表情の本当の意味を、太一は理解している。

今はもう分かるようになった。幼かった頃は、そのありがたさすら知らずにいたけど。









「もっと大事にしなさいよ? 自分の身体なんだから」

「あぁ、そうだな」

「・・・本当にわかってるのー?」

優しく触れていたはずの、白く温かい手が太一の頬をつねる。

「いへ! いへーってそら!」

「なら反省しなさい」

頬を解放すると、彼は自分の両手でつねられ赤くなってしまった頬を包み込む。

「つ〜! 痛かったぁ!」

「怪我してない側の頬だから大丈夫でしょ?」

「痛ぇもんは痛ぇって」

半泣きになって嘆く太一。彼が頬をおさえてる手の上に、自分の手を重ねる。

「だったら、本当に気をつけなさい」

「・・・あぁ」

「返事は?」

「はい」

二人目を合わせ、そして自然と笑いあった。









「けど、怪我に気をつけるのは空も同じだからな!」

「私は太一ほど怪我しないもの」

「うっ! と、とにかく! 空も気をつけること!」

わかったか? と念を押す太一に「はい」と空は答えた。

「よし、約束な」

「うん。約束」

絡め合う小指と小指。幼い頃からの約束の印。

もっと自分を、大切にして。護ってあげる。護ってあげるけど。

でも自分も、護ってあげて?



おり文:貴方が貴方を傷つけるたびに 私の胸は苦しくなる
デジノーマルアンソロの原稿をやっている最中スランプに陥りました。
おーのー。