20万打企画 Vol,8









Masahiro gabe Akiko an affectionate kiss.









彰子が熱を出してから早三日が過ぎた。

もともとあまり体の強い方ではないけれど、彰子は一度体調を崩すとなかなか戻らない。

けれど、それはもちろん彰子自身が悪い訳じゃない。

以前に・・・オレと彰子が出逢ったあの頃、沢山のことがあって。

彰子の中に残るものもあった。

それらが原因でもあるから、守りきることができなかったオレの責任でもある。

けれど、それを口にはしない。

そんなことを言えば、彰子は自分を責めるから。

だから彰子にも同じ事を言う。

心配するのは、彰子のことが好きだからだよ。だから彰子は、余計な事なんて考えないでゆっくり休んで、と。









「彰子の調子はどうだ?」

風呂から上がって部屋に戻ると、開口一番もっくんがそんなことを言ってきた。

「お風呂上がりにそんなことを言われてもわからないよ」

オレはタオルで髪を軽く拭きながら、もっくんの脇に座った。

すると物の怪は首を左側に少しかしげる。

「寄らなかったのか?」

「どうして?」

心底不思議そうに尋ねてくるもっくんに、逆にオレが真剣に尋ね返す。

「いや、お前のことだから寄ってくると思ったんだけれどな」

「だって眠ってるところ、邪魔したら悪いじゃないか」

オレはそう言って、布団を敷き始めた。









けれど、もっくんに言われて気になり始めた。

そういえば、今日朝家を出る前に逢っただけ、だよな。

昨日も前々話しをできなかった気がする。

一昨日なんて、彰子が熱を出したと人伝いに聞いただけで本人には会えなかった。

彰子は、元気だろうか。

もしかしたら寝ているかもしれない。

もうだいぶ良くなったと聞いたけれど、実は無理をしているかもしれない。

誰も気づいてないだけで、彰子は自分の身体に鞭を打つように・・・









「オレちょっと彰子の部屋行ってくる!!」

もっくんの返事は聞かずにオレは部屋を飛び出した。

首元にタオルをかけたまま。

「もっと早くに気づけよ、孫」

当然、物の怪の嫌みすら聞こえてないのであった。









「彰子!!」

「?! 昌浩?」

かけ込み乗車ならぬ、かけ込み女子部屋。

いくら相手が1年と数ヶ月、自分の家に居候し、半永久的にそれをする約束となっている彼女だが

仮にも藤原の姫であることを、昌浩は忘れている。









「え、あ、ごめん・・・」

飛び込んだ後に、気づいた。

彰子は布団で身体を横にしていたが、俺が着たことに驚いて起きあがった。

「あ、気にしなくて良いよ。眠ってなきゃ」

「もう大丈夫よ。熱も引いたの」

それでも体を温めなきゃダメだよ、と彰子を促し布団をかぶらせる。

けれど彰子にも意地があって、布団に眠ることはなく座る体制。

それだと背中が冷えちゃうよ、とオレは衣を被せた。









「どうしたの、昌浩。お風呂上がりに・・・」

彰子はそっとオレの髪に触れた。まだ湿っている髪の毛。

「ちゃんと拭かないと風邪引いちゃうわ」

首に掛かっていたタオルを手にとって、オレの髪を優しく拭いてくれた。

「オレのことはいいんだよ! それより彰子こそ、身体は大丈夫なのか?」

「昌浩のこと、どうでもいいわけないわ。みんな昌浩のこと大好きなのよ」

オレの質問に半分だけ答えた彰子は、少しだけ怒っていた。

けれどそれは心配してくれているからだと分かってる。

オレは素直に、彰子に髪を拭かれていた。









「はい、おしまい」

「うん、ありがとう。それで? 彰子の方こそ、本当に大丈夫?」

彰子の白くて綺麗な額に手を重ねる。

ん? ちょっと熱くないかな・・・?

反対の手で自分の額に触れた。それではっきりとする温度差。

「彰子、熱。まだあるよね?」

「そんなことないわ」

「そんなことあるよ。ほら、オレのおでこ冷たいだろ?」

今度は額と額を重ね合った。

直接彰子の熱を感じる。うん、やっぱり熱い。









「ダメだよ。ちゃんと本当のことを伝えなきゃ」

「本当に体調はよくなったのよ?」

「そう思ってるだけ・・・思いこんでるんだよ、きっと。

心配かけたくないって気持ちはわかるけれど、でも何かあったときの方が心配するんだよ?」

おでこの汗にくっついている前髪をよけながら彰子に少しだけお説教。

彰子はちょっとだけ困った顔をした後、俯いてごめんなさい。と小さく呟いた。

「でも、でもね! 本当に今日はとても調子が良かったの」

「うん。少しずつ、体力も戻ってきてるんだと思う」

「そうよ? だから、心配はいらないから」

彰子は笑顔を浮かべた。

心配しないで、と。その一言を自分も簡単に口にしているけれど

いざ言われる立場になると、これほど痛い言葉なのかと痛感する。









「彰子の風邪、全部オレがもらえればいいのに」

布団と、衣と、そして彰子を。

全て抱きしめた。

彰子は最初驚いて、そしてあまり・・・いや、全く力の入っていない手で抵抗してきた。

オレのことを引き離そう手、手で押す。全然意味は無いけれど。









「ダメよ、昌浩。本当に風邪がうつっちゃう」

「いいよ。彰子の風邪なら、いくらでももらってあげる」

「よくないわ。昌浩のこと頼りにしている人は沢山いる。それに、昌浩が風邪引いたら

沢山の人が心配するわ。だから、離れて・・・」

弱々しい抵抗は、求める声と何ら変わりなく聞こえた。

「それは彰子も同じだろ? 彰子のこと心配している人、沢山いるんだ。

オレも、彰子も同じくらい心配してくれる人がいる。だから、無茶はしないで。約束」

ね? と目で強く念を押す。

わかったわ。と小さな彰子の口がゆっくりと動いた。









「うん、良い子」

「子供扱いしないで」

「してないよ。彰子のことが、大切なだけだ」









オレは彰子に愛情を込めてキスをした









「・・・っ」

「これで風邪が移ればいいのになぁ・・・」

「清明様に怒られちゃうわよ、昌浩」

「げっ! それはちょっと嫌・・・だなぁ」

オレがその姿を思い描き、本当に焦ると彰子は笑っていた。

笑うなよぉ、と言っても「ごめんなさい」と言いながら笑い続けていた。

ちょっと悔しかったけれど、でも彰子が笑ってくれているならそれでいいか。









「早く風邪なおしてね、彰子。それで一緒に、市にでも買い物に行こう」

「本当? 約束よ? 絶対だからね?」

彰子が更に嬉しそうな表情をオレに向ける。

うん、絶対。今度の休みはちゃんとあけておくから。

だから彰子は風邪を治すんだよ、とオレは言う。

「うん! そしたらお買い物。あ、もっくんも誘わなきゃね」

手を合わせてその日を楽しみにする彰子はとても可愛かった。




ただ、オレにとっての久々の“デート”に物の怪が付いてくることに、少しだけ嫉妬した。



おり文:君を心配するのは君が愛しいから 君が心配してくれるのは愛の証拠
1作目の20万打作品です。順番通りなんて無理ですよ、無理無理(笑
太空率が多い中しょっぱな昌彰なのは、今ちょうど少年陰陽師を読んでいて
ちょーっど昌浩と彰子がお話ししているところだったからです。新章の1巻目(笑