20万打企画 Vol,49









A smile to make ends meet on happiness.









これはまだ、お兄ちゃんと私の部屋が共同だった頃の話し。

中学に入ったお兄ちゃんは携帯を買ってもらって、私は毎日のように

いいな、いいなと言いながらお兄ちゃんの携帯をいじらせてもらっていた。

メールとか、プライバシーに関するものは絶対に見ないという条件で。

それは当たり前のことだし、それ以外は何をしても怒られないから

私は自分の携帯のようにお兄ちゃんの携帯をいじっていた。









着信メロディーも私が好きなのを入れていいって言われてる。

ただ、あんまりにも乙女チックなのは止めてくれ、とは言われてるけれど。

それともう1つ。2曲だけ保護ガードがついている着メロがある。

1曲はメールの着信音として固定されているもの。

もう1曲は、電話の着信音。どちらも同じ、武之内空さん限定のメロディー。

これだけは絶対に消すな。いじるな、と強く言われている。

もちろんそれを破るつもりはない。だって、空さんはお兄ちゃんにとって彼女にあたる人だから。

そして私の、とても尊敬している人だから。









それともう1つ。

ヤマトさんの着信メロディーとメール受信のメロディー。

これは両方とも同じ曲で、私が小さい頃よく見ていた子供向け魔法少女アニメのオープニング。

あ、先に誤解がないように言っておくと決して私の趣味じゃない。

別にお兄ちゃんの趣味ってわけでもないけれど。

ただ・・・なんて言うのかな。遠回しの、からかい? 繋がる先は一種の愛情表現、友情表現。

最初に携帯を買ったときにお兄ちゃんはさっきはなした2曲をすぐにとった。

理由は分からないけれど、その2曲は決まっていたらしい。

なんで? って聞いても全然教えてくれなかったけれど。

それで、2曲取った後にお兄ちゃんが突然「なつかしい」と言ってみしてくれたとき

携帯画面に表示されていたのがこの曲「メロメロパールン愛のテーマ」

冗談で笑って懐かしい、って言っていただけだったのに。まさか本当にダウンロードするなんて。

しかも、ヤマトさんに使うなんて。









前に一度、いつもの8人で集まっているときにヤマトさんが何かのようで

お兄ちゃんにメールを送ったことがあった。

その時にこの「メロメロパールン愛のテーマ」が流れて大爆笑したことがある。

本来ならそんな曲を使ってるお兄ちゃんが笑われる所なんだけれど

成り行きを説明して、何かヤマトにピッタリだと想ったんだよな。とお兄ちゃんが言うと

ヤマトさん以外のみんな笑っていた。そしてなぜか、他の携帯持っている人達も

ヤマトさんからの着信音をそれにするという・・・やっぱり嫌がらせなのかな? 愛情表現かな?

とにかく、ヤマトさんはメロメロパールン愛のテーマなのよね。









そんなわけで、その3曲を除いた着信メロディーを私は勝手にいじる。

今日も宿題を終えて暇だった私はお兄ちゃんの携帯をいじっていた。

お兄ちゃんはベットで横になって雑誌を読んでいる。

いつもの後景だった。

けれど突然、お兄ちゃんの携帯に電話がかかってきた。

メロディーボックスの1番したに入っている保護付きメロディーと「武之内空」の表示。

空さんからの電話だった。









「お兄ちゃん、電話」

「ん。わかってる」

私がお兄ちゃんに携帯を渡すと、お兄ちゃんはサンキュと言いながらそれを受け取った。

そしてボタンを押すのと同時にお兄ちゃんはベランダへの窓を開けて出て行った。









お兄ちゃんは必ず、ベランダにでる。

ヤマトさんとか光子郎さんとか、他の友達は部屋で話をするけれど

空さんからの電話の時は必ずベランダだ。

雨が降ってても、雪が降ってても。

初めは私が居るから気を使ってるのかな、とも想ったけれど

私が居無いときもお兄ちゃんはやっぱりベランダで空さんと電話をしていた。

空さんに関するお兄ちゃんのことは、よくわからないことばっかり。









今日もお兄ちゃんはベランダで電話をする。

私からお兄ちゃんの顔は半分しか見えないけれど、凄く幸せそう。

サッカーをしてるときの幸せそうとは、少し違う感じ。

何だろう、上手くは言えないけれど。前に読んだ本に書いてあった




幸せの上に成り立つ笑顔。




まさにそうだと思う。最初に見たとき、凄くビックリしたから。









多分、お兄ちゃんをこんな表情にできるのは空さんだけなんだろうな。

私は引き出しからカメラを取り出しながら想う。

相変わらずお兄ちゃんは笑顔で話をしている。右手がちょっとだけ動いていた。

空さんに何かを説明しているのかもしれない。

それが伝わったのか安心した笑顔。それから、戸惑ってる表情。焦っている顔。

お兄ちゃんの表情はころころと変わる。見ていて、おもしろいほど。

けれど必ず最後にはまたあの笑顔に戻る。

手すりに腕を伸ばして、星空を見上げながらあの笑顔で相手の見えない会話をする。









パシャリ









私はそんなお兄ちゃんを1枚、写真に収めた。

お兄ちゃんはそれに全然気づく様子はない。

ほっと胸をなで下ろして、私はすぐにそのカメラを引き出しに閉まった。

フィルムの残りは後2枚。明日お出かけして何か撮ってすぐに写真屋さんに出してこよう。

そしたら、この1枚はあの人にあげるんだ。

お兄ちゃんを、こんな笑顔にさせるたった1人だけのあの人に。









そしたらきっと、空さんも同じ表情をしてくれるよね?




幸せの上に成り立つ、あの笑顔を。



おり文:いつも見てきた笑顔とは違う 幸せの上に成り立つ最高級の君の顔
別にヒカリちゃん視点にする必要は絶対になかったと想いますし
ましてヤマトの着信メロディー云々なんてどうでもよかったし
最終的になにが太空なのかわからない結末になってしまいました。汗