20万打企画 Vol,42









Because good-bye is not parting.









太一がブラジルに旅立つことが決まったのはほんの1ヶ月前。

ずっと昔から、サッカーの本場であるブラジルに行きたいというのが太一の願いだった事を空は知っていた。

けれど、中学、高校は日本の学校に通いなさい、という両親の言いつけをまもって

太一は日本の学校で・・・空たちと同じ場所で、サッカーを続けていた。









けれど、大学への進学が決まってすぐに。

太一を含め、体育学部サッカー部がブラジルへの留学があることを聞いた。

当然参加するのは全員じゃない。

部員の中から選ばれた、ごく一部のメンバーだけが参加できるもので

今年の新入生で行くのは太一1人だった。









「ガンバレよ、太一!」

「たまには手紙、くださいね」

旅立つ日。

空たちは、太一を見送りに空港にきていた。

空たちというのは、空と太一を含めた8人。初代選ばれし子供達。









「おう! ぜってぇーあっちの奴らから点とって帰ってきてやるぜ!」

「ぼろ負けだったら帰ってこなくていいぞ!」

「ちょっとヤマト。それは言い過ぎだぞ」

ヤマトのちょっかいを止めるように丈は口を出したが

「太一。言葉が全く伝わらなくてもジェスチャーがあるから諦めるな!」

「丈さん。それってつまり、太一さん外国語がしゃべれないって言ってますよね?」

「でも事実よね、お兄ちゃん」

丈に続き、タケル、とどめはヒカリ。

おいおいお前ら、とあきれ顔で太一は苦笑する。









「やべぇとおもったらすぐ光子郎にメールして聞くよ」

「ボクも暇人ではありませんので。というか、受験生ですし」

「いやー! そんな現実的なこと言わないで、光子郎くん!!」

ぼこぼことミミは拳で光子郎を殴る。

やめてください、と情けない彼の声が響き一同は笑った。









ふと太一が、気づく。

「空?」

「え?」

彼女が何も喋っていなかったことに。

「どうかしたのか?」

「ううん。なんでもないわ。本当に頑張ってきなさいよ、太一。

それと、少しは外国語の勉強もしてきなさいよ?」

空派普段通りを装って笑いながら言う。

その笑顔が、見ていた仲間達には痛々しかった。









「あ、俺バンド仲間と打ち合わせあるんだ。んじゃ、先帰るな。

こっちに帰ってきたら連絡しろよ、太一」

「え? あ、おぉ!」

手を振って去っていくヤマトに続き、丈も用があると去っていく。

「では僕達も。学校で行われる補習がありますので」

「えー?! 今日は参加しないって、光子郎くん言ったじゃない!!」

「ボクは参加しなくても平気ですが、ミミさんは志望校への点が半端なくたりないでしょう?」

「うげっ!」

それでは失礼します、と頭を下げて帰っていく光子郎と

最後までだだをこねながら、それでもしっかりと太一にお土産を頼むミミ。









「それじゃぁ僕達も」

「これ以上お邪魔しちゃいけないからね。お兄ちゃん、行ってらっしゃい」

言い訳すらせず笑顔で去っていくタケルとヒカリ。

とうとう残されたのは太一と空だけだった。









「あいつら・・・」

「そんな、気つかってくれなくて良かったのに」

「んまぁ、俺としては嬉しいけどな」

「え?」

太一の顔を見上げる空の腕を、彼は引き寄せる。

足元がふらつき、すっぽりと彼の腕の中に空は収まった。

「きゃ・・・ちょっと!」

「こういうこと、当分できなくなるんだよな」

「・・・うん」

彼の言葉が空を現実へ引き戻す。

これから始まる悪夢のような日々を思い出させる。









「空」

「なに?」

「俺、空が好きだ」

「え?」

唐突な告白。

それは何度も聞いた愛の言葉だったけれど、突然言われ空は驚く。









「俺、空しか見てねぇから。だから、心配するな」

「・・・ばーか。最初から、してないわよ」

「それもひどくないか? 俺は、心配だらけなのによ」

ぶつぶつ、と太一は言葉を並べる。

他の奴に無理矢理奪われないか、大学で・・・

傍にいられない不安。

「大丈夫だよ、太一」









私も、太一が好き。太一しか、見てないから。









空は背伸びをして、彼の耳元で囁き

ほっぺに唇を重ねた。

不意打ちを疲れた太一は唖然とする。

空は恥ずかしいのか、太一と視線を合わせようとはしなかった。

やがて我に返った太一は、笑った。









「笑うことないでしょ!」

「悪ぃ、悪ぃ。だって、まさか空が」

こんな公共の場で、自分からキスしてくるとは想わなかったからさ。

声を押し殺して太一が笑うから、空は更に恥ずかしくなる。

やがて遠くから、太一を呼ぶ声がした。

先輩のものだった。









「それじゃぁ、俺行くな」

「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」

「ああ」

じゃぁな、と笑って太一は前へ歩み出す。

しかし何を思い出したのか、くるりと太一は振り返った。









「太一?」

「忘れ物」

言うと同時に、太一は空の唇を塞いだ。









「んじゃ、行って来ます」

「・・・っ!」

空が何かを言い返す前に、太一は仲間・・・新しい仲間達と合流する。

そしてそのまま、飛行機へと向かう。









「太一の、ばか」

呟く彼女の目には涙が溜まっていたが

その瞳は幸せそうに笑っていた。

彼はまた、帰ってくる。必ず。また会える日が来る。




さよならは別れじゃないから。



あおり文:meet again 信じてるから だから必ず・・・
久々の太空で、何とも言えない感じで
消化不良です。お待たせしておいてこんな作品ですみません。汗