20万打企画 Vol,30









Her shouts roused him from his sleep.









目を開けているはずなのに、辺り一面に光はなかった。

「どこだ、ここ・・・?」

東京? いや、違う。いくら深夜でも都会の夜はここまで暗く、静かにはならない。

ではデジタルワールド?

それも違う、だろう。足が地から浮いている感じがする。

この感覚・・・以前、アポカリモンと戦ったあの空間に似ている。









「夢か?」

こんなにはっきり夢だと自覚するそれは珍しいな。

太一は苦笑しながら、辺りを見回した。

しかし、どこを見ても光はない。一面に広がるのは闇だけ。

「おーい! 誰かいないのかー? アグモーン!」

空間があの時の記憶と重なるからだろうか。

彼は自然と、初めに相棒であるデジモンの名を呼んだ。









「ほっぺたつねったら目覚めたりしねぇかな」

自分のほっぺを指で摘んだときだった。

小さな嗚咽と泣き声が聞こえてきたのは。

「・・・誰か、いるのか?」

太一は耳を澄ます。その声は、聞き覚えのある女の子のモノだ。









「・・・空?」

空、なのか?

「おーい! そらー?」

声のする方へと太一は進んでゆく。

泣き声との距離が縮まるたびに、この声の主が幼馴染みである彼女だと確信する。

「空! 返事してくれ、そらー!」

聞こえてくるのは泣き声のみ。

だが、その声すらもやがて薄れてゆく。









「そら・・・?」

いなく、なったのか?

歩みを止めたその時だった。









「キャーーーーーーー!!!」









「空?!!」









彼女の叫び声。

空の叫び声で太一は目が覚めた。









「っ! はぁ、はぁ・・・っ!!」

勢いよく太一は布団を振り払い起きあがる。

背中に冷たい汗が走る。

先程のモノは・・・夢?

分かっていたはずのことを、くり返し自問自答する。あれは、夢なのか?









空が見えない。

空の泣き声がする。

叫びが聞こえる。

なのに自分の手は、彼女に届かない。彼女を瞳に捕らえることすらできない。

「・・・くそっ!」

拳を強く握りしめる。

いくら夢だとしても、たちが悪すぎる。こんなもの。









「っ! そうだ、空!!」

彼はすぐさま、自分の部屋を飛び出し彼女の眠る寝室へと向かった。









折角の休日ですし、みんなで遊びに行きませんか?

提案をしたのは、八神ヒカリと高石タケルだった。

その案に賛成した一同・・・選ばれし子供達8人は、今沖縄の宿泊所に泊まっている。

タケルが町内の福引き大会で当てた、わりと豪華なホテルだった。

というのも、1つの部屋の中に個室が8こ用意されている。

つまり1人1部屋のわりあてがきくのだ。









夜が明ける時間までみなで雑談をしたりゲームをしたりと自由にしていたが

やがて、1人、また1人とその場で眠り始めてしまった。

そして、最終的に最後まで起きていた太一、ヤマト、光子郎、空の4人で他のメンバーを各自決めた部屋へと運び

旅行1日目は静かに幕を閉じたのだった。









「空!」

彼女の眠っているはずの部屋に、ノックもせずに太一は駆け込んだ。

しかし、その部屋に彼女は見あたらない。

「空・・・?」

ベットにも、机にも、ベランダにも居ない。

他の部屋・・・個室以外の場所は全て探したが、どこにも空はいないのだ。









嫌な悪夢がよみがえる。

彼女が、見えない。

「くそっ!」

もう我慢の限界だった。携帯すら繋がらない。

ヤマトをたたき起こして探すのを手伝ってもらおうとしたときだ。

ふと目に入ったのは綺麗に並べてあるみんなの靴。

その中に、彼女のモノがない。









「外に・・・でたのか?」

考えることなどしない。思い立ったらすぐ行動の太一は靴を慌ててはき、とびだした。

ここのドアがオートロックであることも、鍵を持っていないことも忘れて。









宿泊した部屋は23階。

温泉やジムや受付があるのは1階だ。

太一はすぐさま階段で1階まで下った。エレベーターは待っていられなかった。

とにかくすぐに、空に逢いたい。









1階にたどり着いた瞬間。

彼はやっと、視界の中に彼女を捕らえた。

闇夜へと進んでゆく彼女。薄着でその場にいる彼女。

おおきく、躊躇うことなどなく、太一の口は開かれた。









「空!!!」









「たい、ち?」









彼女は、外にいた。

ホテルの駐車場を歩いていた。

太一の声に気づき振り返る。そこには、汗をかきながらもこちらに向かってくる彼がいる。

「ちょっと、太一。どうしたの? そんなに汗かいて!」

驚いて空は目を見開く。

彼のその行動も不思議だが、何より何かに怖れているような表情がきにかかる。

空からもかけより太一との距離を縮める。

その距離を無にしたのは、やっぱり彼だったけれど。









「空・・・!!」

「ちょ、ちょっと太一?!」

ここが外であることも、公共の場であることも太一には関係なかった。

あまり設置されていない街灯。小さなヒカリしかともしていないそれ。

まだ日が昇っていない空。月すらもが、雲に隠れて光を与えない。

そんな中に、1人で居ないでくれ。

俺から離れて、何処かに行かないでくれ。

伝えたい言葉は沢山あるのに、どれも言葉にならない。

ただただ彼女を力強く抱きしめることしか太一にはできなかった。









「・・・ばか。どうしたのよ?」

彼から事情を聞くことを諦めた空はゆっくりと太一に自分のみを預ける。

そして優しく、彼の背中に腕を回した。

「怖い夢でも、見たの?」

小さく彼が頷くのを振動で感じる。

そっか、と優しく答えてくれる彼女の声と伝わってくる温もりが、これが現実だと太一に教える。









「大丈夫だよ、太一。私ちゃんと、ここにいるよ」

「空・・・」

「離れたり、しないから」

だから安心して。

彼女のその言葉は、まるでマホウの言葉。

たったその一言で、闇が全てなぎ払われる。世界に光が満ちる。









「あぁ」

やっと腕の中に捕らえることのできた光を強く強く抱きしめながら

彼女に気づかれないよう、太一は一粒の雫をこぼした。



あおり文:君が見えない 君が感じられない 君が捕らえられない これほどの恐怖は無いというのに
続きます。ぇ
ふざけた感じに続きます。久々の20万打お題でした。更新遅くてすみません(汗
てか太一さん泣かせちゃった・・・!