20万打企画 Vol,26









She leaned against his shoulder.









登校するための電車の中は常に満員である。

満員電車には耐えられない、と朝早く学校に向かう友達もいるけれど

結局のところ、1,2本電車を早くしたところで電車の混み具合はそうそう変わらない。

2時間ほど早くすれば、それは当然少しは車内もすくのだが、そんな早く学校についても仕方がない。

結局、文句を言いながらも毎日満員電車に耐えるしかないのだ。









「いつもの事ながら、すげぇよな」

「ホント。もう1車両ぐらい増やしてくれればいいのに」

ぎゅうぎゅうと人に押しつぶされながら、空と太一は何とかそこに存在していた。

高校に通うようになってからかれこれ半年以上が経過しているが、これには全く慣れない。

空にしてみればいつ“痴漢”にあうかが不安でたまらない。

知らない人とこんなにも密着しているこの状況も、嫌だった。

ワガママなんて言っていられる場合じゃ無いと分かっているけれど。









「次の駅で少し空くな」

「う、うん」

次にとまる駅は成田空港行きの特急成田エクスプレスが止まっている。

それに乗る人がこの車内には沢山いるので、そこで一気に人が減るのだ。









電車が停まる。

開かれたドアから勢いよく人々が飛び出していった。

「キャッ!」

「空!」

人並みに流されそうになる空の腕を太一は掴む。

そのまま勢いに身を任せ、彼は彼女を抱き寄せた。









「大丈夫か?!」

「う、うん。ありがとう、太一・・・」

流れてゆく人々。しかし、それをかわしながら再び乗ってくる乗客。

「・・・何か今日、人多くない?」

普段はこんなにも乗ってこない。

それなのになぜだろう。今日は降りた人と同じほど、乗ってくる人数がおおい。

「・・・」

太一は無言のまま空の腰に手をやり、そしてドア際へと移動する。

彼女を庇うように、自分が壁となった。









「太一?」

「なんか、すげぇ嫌な予感したから。こんな満員で空が痴漢にあったら嫌だし」

「!」

それは空が普段から抱えている不安だった。

いつか、もしかしたら、出逢ってしまうのでは・・・?

心から安心して電車に乗った日など無い。常にその恐怖はまとわりついていた。









太一は、そんな空の気持ちに気づいてくれていた。

だから自分を庇うように、太一自身のみを犠牲にし空を護る。

大切に、してくれる。









「ありがとう・・・」

空は太一の肩にもたれかかった。

先程まで嫌だと想いながら密着していた人とは違う。

愛しくて、離れたくない。温かい温もり。太一の存在。

「ん? 別に、当然のことだし」

さらりとそう言う彼が好き。

素直に心から空はそう思った。口にはしなかったけれど。

彼に甘えるように、その身体を預ける。

太一も空を支えるように、彼女を抱き寄せる。









端から見たらバカップルだろう。

公共の場で、だなんて想うかもしれない。

しかし今は満員電車。誰1人、彼らに気づくことはない。

気づいているとすれば、空を狙っていた愚かな痴漢ぐらい。









「なんかよくわかんねぇけど、お礼言われるのは嫌いじゃねぇ」

笑いながら太一は、優しく彼女の頬に口づけた。

一応他の人達の目に付かないよう、片手で隠しながら。あまり意味はないけれど。

「ばーか」

「うるせぇ」

くすくす、と笑い合う。幸せの声。









どんなに苦しい満員電車でも 太一が一緒なら大丈夫。

彼の指に自分の指を絡ませながら、空はふとそう想った。



おり文:貴方が共にいてくれるのなら 地獄だって天国に変わる それほど貴方は私にとって・・・
満員電車ネタ。
・・・てかこの人達は電車使うのか?! もしかしてユリカモメか?!!笑