20万打企画 Vol,20









Sora gave Taichi a crack on the head.









いつも通りの下校時刻。

いつも通りの帰り道。

いつも通り、隣には太一がいるのに。

何故だか彼から、いつも通りの活気が伝わってこなかった。









今日は別に、何もなかったと思う。

太一の大嫌いな地理の授業もなかったし、生物だってなかった。

それどころか、自習が2時間。どれもこれも、クラスで“自習”と呼べるものは行われてなくて

みんなそれぞれ、雑談、読書、そして携帯いじり・・・

そんなこんなだったけれど、太一が機嫌を崩すような授業はなかった・・・はず。









それに。

機嫌が悪いというのは少し違う気がする。

幼稚な言い方をすれば、元気がないといった方が表現としては正しい。

でもそれはつまり、普段元気の塊のような太一が元気がないわけで。

いつもとは全く別の彼になってしまったみたいで、隣で歩く私は少しだけ寂しかった。









「ねぇ、太一」

名前を呼んでみる。反応がない。

私に気づいていないのか、いつもより視線を下に向けて黙々と歩き続けている。

「太一ってば」

やっぱり気づかない。私はちょっとだけ駆け足になって太一の前に立ちふさがった。









「太一!」

「おぅわ?!」

やっと私に気づいてくれた。

慌てて立ち止まって、目をぱちくりさせて、空ぁなんて私の名前を情けない声で呼んでる。

「どうしたんだよ。忘れ物か?」

「それはこっちのセリフ。どうしたのよ、太一。元気ないわよ?」

私は太一の瞳を捕らえて逃がさなかった。

けれど、そんなことしなくても太一は逃げない。誤魔化したりしない。

・・・私とは、違うから。









「次の、サッカーの試合の相手校さ、めっちゃくちゃ強ぇんだよ」

「うん」

「それでさ、今のオレ達で勝てんのかなってちょっと思って。

この間の日曜さ、俺らギリギリPK勝ちで佐原校に勝っただろ? でも次戦うとこ

北浦校ってとこなんだけどさ、佐原に4:0で余裕勝ちしたとこなんだって」

太一は多分自分でも気づかないほど口がフルスピードで動いていた。

けれど私は一生懸命その言葉を聞き取った。

「んでさ、オレ達佐原にすら必死だったのに、北浦なんかに勝てんのかなって・・・」

そっか。

それで太一は、そんなにくらい顔をしてたのね。全く!









私は太一の頭をピシッとたたいた。









「ってぇーっ?! そらぁ?!!」

痛いわけないでしょ、バカ太一。

「バーカ。なに弱気になってるのよ、太一。弱気で勝負して勝てる試合なんてあるわけないって

いつも太一が部員のみんなに言ってる言葉でしょ?

それなのに、部長の太一がそんな心配そうな顔していたらみんなもっと不安になるじゃない」

私たちは中学3年生。

この夏の試合が、太一達にとって最後の試合。

負けたらお終い。勝てば勝ち続ける・・・試合に、ずっとでられる。

決勝戦は2学期の半ばだから、それまで3年生も部活に参加することを許される。









勉強がしたくないと

言ってしまえばそれだけなのかもしれないけれど。

でも、太一からサッカーをとったら何が残るの?

もちろんそれ以外に取り柄が何にもない人間だなんて全く思ってない。

けれど、太一にはできるならいつまでも青空の元、サッカーボールを追い続けていて欲しい。









「ちゃんと応援に行くから。太一は私の分も、頑張って!」

ツートップ

最強のツートップと、私たちは小学生のころ呼ばれていた。

けれど中学生になってそうはいかなくなった。男子と女子でサッカー部が別れていたから。

そしてわたしは、女子サッカー部には所属しなかったから。

沢山の人に声をかけられた。

先生にも、先輩にも、友達にも。

けれど私は部に入部することなく、2年半を終えた。

理由なんて無いけれど、私の中で常にサッカーとは太一とするものだったから。

男子と女子でわけられてしまうだなんて、冗談じゃないと。そう強く思ったから。









どうして自分は、男の子に産まれてこなかったのだろう。と









だから私は部活はどこにも入らなかった。

合唱部に少しだけ興味があったけれど、あんなにサッカー部に勧誘されたのに

それを無視して他の部活にはいるのはとても気が引けたから。

だから“部活”というものは憧れで、縁のないもので終わってしまった。

高校生になったら、入ろうかな。どこか・・・









そんな気持ちもあるから。

だから私は、太一にサッカーを続けて欲しいのかもしれない。

だって太一はできる。男の子だから、余計な事なんて何にも気にしないで。

サッカーボールを追い続けることができる人。

それをすることを大好きな人。サッカーをしているときのサッカーが一番輝いてる。









「空? どうかしたか、そーらー?」

「え? あ、ごめんっ」

いつの間にか、太一よりも私の方が考え込んでしまったみたい。

太一が心配そうに私の顔の前で手を振る。

「どうかしたか?」

「ううん、なんでもないの。とにかく! やるまえから負けたらなんて弱気なこと考えるの、太一らしくないよ!」

私の一生の相棒。

あなたの一生の相棒に、私はなれないかもしれないけれど。









「そうだよな! つーか、オレが負けるわけねぇよな!!」

「そうよ、その気、その気!」

「空も一緒に試合、できればいいのにな」

太一の小さな本音。

私の本音とおなじそれ。









「けど、空も応援、来てくれるんだろ?」

「もちろんよ! ちゃーんと私の最強の相方が頑張ってるか見に行っちゃうんだからね!」

「頑張ってるに決まってるだろ? なんてったって部長だぜ?」

少しずつ、いつもの太一が戻ってくる。

声に活気が。表情に笑顔が。

それが嬉しくて、私までつられて笑う。









「試合、頑張ってね、太一!」

「おう! 佐原にも勝ったんだ! 絶対に負けねぇ!!」









いつもの彼の瞳は、いつも以上に輝いていた。

そんな彼率いる私たちの中学校が、夏の試合決勝まで残ったのは、また別のお話し。



おり文:私にとっての一生の相方はあなたでも 時間の進んでいるあなたにとっては違うのかな
なんだか結局空ちゃんが思い悩んでしまいました(汗